相続放棄すると特殊清掃費用は支払う必要がある?支払い義務と注意点をわかりやすく解説!
家族が孤独死した場合、相続放棄をすれば特殊清掃費を支払わなくてよいのか気になる方もいるでしょう。
相続放棄をすると、原則として被相続人の権利や義務を引き継がなくなります。ただし、連帯保証人になっている場合や、相続放棄前に遺品を処分した場合などは注意が必要です。
相続放棄と特殊清掃費の関係や手続き、注意点を解説します。
Contentsこの記事でわかること
- 💰 相続放棄をすると特殊清掃費の支払い義務はどうなるのか
- 📝 相続放棄の手続きと3か月の期限
- 🤝 連帯保証人になっている場合の責任
- 📦 遺品や相続財産を処分するときの注意点
- 🏠 相続放棄後に残る可能性がある管理上の注意点
- ⚖️ 遺族として対応するときに確認しておきたいこと
相続放棄をすると特殊清掃費用の支払い義務はなくなるのか

相続放棄が受理されると、その相続については初めから相続人ではなかったものとして扱われます。そのため、被相続人が負担すべき債務についても、原則として相続人として引き継ぐことはありません。民法939条でも、相続放棄をした者は初めから相続人とならなかったものとされています。
特殊清掃費についても、「亡くなった人の債務として相続人が負担する」という関係であれば、相続放棄によって支払い義務を引き継がないのが基本です。
ただし、相続放棄をしたからといって、どのようなケースでも特殊清掃費を支払わなくてよいとは限りません。
たとえば、遺族自身が賃貸借契約の連帯保証人になっている場合は、相続人としてではなく、連帯保証人として費用負担を求められる可能性があります。また、自分で特殊清掃業者と契約した場合も、その契約に基づく支払い義務は相続放棄とは別に考える必要があります。
相続人としての支払い義務は原則として引き継がない
相続では、預貯金や不動産などの財産だけでなく、借金などの債務も承継の対象になります。
一方、相続放棄をすると、その相続について初めから相続人ではなかったものとされるため、被相続人の債務を相続人として負担することも原則としてありません。
そのため、特殊清掃費や原状回復費などについて請求を受けた場合は、まず何を根拠に自分へ請求されているのかを確認することが重要です。
| 請求される立場 | 相続放棄後の考え方 |
|---|---|
| 相続人としての債務 | 原則として承継しない |
| 連帯保証人としての債務 | 相続放棄とは別に責任が残る可能性がある |
| 自分で業者と契約した費用 | 自分の契約に基づく支払い義務が生じる |
| 自分が追加工事を依頼した費用 | 依頼内容に応じて負担する可能性がある |
「遺族だから支払わなければならない」と一括りにせず、請求の根拠を分けて確認しましょう。
相続放棄を検討している段階での支払いには注意する
相続放棄をする前に、相続財産を勝手に処分すると、単純承認をしたとみなされる可能性があります。
民法921条では、相続人が相続財産の全部または一部を処分した場合、原則として単純承認をしたものとみなすと定められています。ただし、保存行為などは除かれます。
特殊清掃が必要な現場では衛生面から早急な対応が求められることもありますが、遺品の廃棄や売却などは相続財産の処分に該当する可能性があります。
相続放棄を検討している場合は、
- 遺品を勝手に処分しない
- 相続財産から費用を支払う前に確認する
- 高価な家財を売却しない
- 契約内容を確認せず清掃や撤去を進めない
といった点に注意しましょう。
「特殊清掃が必要だから」という理由だけで判断しない
孤独死現場では、臭いや害虫の発生などから早く清掃したいケースがあります。
しかし、相続放棄を予定している場合は、衛生上必要な対応と、相続財産の処分に当たる行為を分けて考える必要があります。
特に、遺品の大量処分や高価な財産の売却、室内の大規模な原状回復などを行う場合は、相続放棄への影響を慎重に確認することが重要です。
判断が難しい場合は、特殊清掃業者だけで決めず、弁護士や司法書士など相続に詳しい専門家へ相談してから進める方法もあります。
ポイント
相続放棄が受理されると、原則として被相続人の特殊清掃費などを相続人として負担する義務は引き継ぎません。ただし、連帯保証人としての責任や、自分で業者と契約した費用は別です。相続放棄前の遺品処分や支払いにも注意しましょう。
参考:e-Gov 法令検索
相続放棄の手続き(3ヶ月以内)

相続放棄をする場合は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから原則3か月以内に、家庭裁判所へ相続放棄の申述を行う必要があります。単に「相続を放棄します」と家族へ伝えるだけでは、法律上の相続放棄にはなりません。
相続放棄をするか判断する
まず、亡くなった人の財産や債務を確認します。
確認したいものには、次のようなものがあります。
- 預貯金
- 不動産
- 有価証券
- 借金
- 未払い家賃
- 原状回復費などの債務
- その他の契約上の支払い
特殊清掃が必要なケースでは、清掃費だけで判断するのではなく、プラスの財産と債務の両方を確認したうえで相続放棄を検討することが重要です。
家庭裁判所へ申述する
相続放棄の申述先は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。申述人1人につき収入印紙800円分が必要で、このほか連絡用の郵便切手が必要になります。
基本的には、相続放棄申述書のほか、被相続人の住民票除票または戸籍附票、申述人の戸籍謄本などを準備します。被相続人との関係によって必要な戸籍書類は異なります。
3か月の期限に注意する
相続放棄の期限は、死亡日から一律に3か月というわけではなく、自分のために相続が開始したことを知った時から3か月以内が原則です。
たとえば、先順位の相続人が相続放棄したことで後から自分が相続人になった場合は、その事情を知った時期が重要になります。
期限を過ぎてしまうと相続放棄が難しくなる可能性があるため、孤独死後の特殊清掃や遺品整理を進めながら放置しないよう注意しましょう。
判断できない場合は期間を延長できることがある
3か月以内に財産状況を調査しても、相続するか放棄するか判断できない場合があります。
そのような場合は、3か月の期間内に家庭裁判所へ「相続の承認又は放棄の期間の伸長」を申し立てることで、期間を延長してもらえる場合があります。
借金の有無が分からない場合や、特殊清掃・原状回復などを含めて債務額を確認するのに時間がかかる場合は、早めに対応することが大切です。
申述後は裁判所からの連絡に対応する
相続放棄の申述後、家庭裁判所から書面による照会が行われたり、事情を確認されたりする場合があります。裁判所から照会や呼び出しがあった場合は、内容を確認して対応する必要があります。
相続放棄を検討している場合は、特殊清掃を急いで進めることだけに集中せず、相続手続きの期限も並行して確認しておきましょう。
ポイント
相続放棄は、原則として相続の開始を知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述します。財産や債務の調査に時間がかかる場合は、期間伸長の申立ても検討し、期限を過ぎる前に対応することが重要です。
参考:裁判所
相続放棄をする際の注意点

相続放棄をすれば、被相続人の債務を相続人として引き継がないのが原則です。しかし、特殊清掃が必要なケースでは、相続とは別の契約上の責任や、遺品・財産の取り扱いについて注意しなければなりません。
特に、連帯保証人になっている場合や、相続放棄前に財産を処分する場合は慎重な判断が必要です。
連帯保証人としての責任は残る
亡くなった人が賃貸物件に住んでおり、遺族自身が賃貸借契約の連帯保証人になっている場合は注意が必要です。
相続放棄によってなくなるのは、あくまで相続人として引き継ぐ権利や義務です。自分自身が連帯保証契約を結んでいる場合、その責任は相続とは別に発生しています。
そのため、相続放棄をしても、契約内容によっては未払い家賃や原状回復費などについて連帯保証人として請求を受ける可能性があります。個人の根保証契約では、契約で定められた極度額が責任の上限となります。
確認したいのは、次の点です。
- 自分が連帯保証人になっているか
- 保証契約の対象となる債務
- 極度額はいくらか
- 特殊清掃費や原状回復費が保証の対象になるか
- 家賃保証会社が利用されているか
単に「遺族だから」という理由ではなく、どの立場・契約を根拠として請求されているのかを確認しましょう。
財産の処分は単純承認とみなされるリスク
相続放棄を検討している場合は、遺品や預貯金などの相続財産を自由に処分しないことが重要です。
民法では、相続人が相続財産の全部または一部を処分した場合、原則として単純承認をしたものとみなす規定があります。単純承認になると、財産だけでなく債務も承継することになります。
特殊清掃現場では、次のような行為に特に注意しましょう。
- 遺品を大量に廃棄する
- 家具や貴金属を売却する
- 被相続人の預貯金を自分のために使う
- 相続財産から費用を支払う
- 財産的価値のある物を持ち帰る
一方で、相続財産の保存に必要な行為など、すべての行為が直ちに単純承認になるわけではありません。
ただし、特殊清掃のためにどこまで遺品を移動・処分してよいかは、現場や財産の状況によって判断が異なります。相続放棄を予定している場合は、価値のある遺品を処分する前に専門家へ確認するのが安全です。
相続放棄後も残る管理義務
相続放棄をすれば、必ず相続財産について一切関与しなくてよくなるわけではありません。
現在の民法940条では、相続放棄をした時点で相続財産を現に占有している人は、その財産を相続人または相続財産清算人へ引き渡すまで、自分の財産と同程度の注意をもって保存しなければならないとされています。
たとえば、亡くなった人の家や財産を実際に管理している場合には、相続放棄後も一定の対応が必要になる可能性があります。
ただし、相続放棄をしたすべての人に一律で管理義務が残るわけではありません。相続放棄時にその財産を現に占有しているかどうかが重要なポイントです。
特殊清掃が必要な物件では、臭いや害虫などによって周囲へ影響が出ることもあるため、相続放棄だけで判断せず、管理会社や大家、次順位の相続人などと対応を確認しておきましょう。
進め方に迷った場合は専門家へ確認する
孤独死現場では、衛生上の理由から特殊清掃を急ぐ一方、相続放棄への影響も考えなければならないため、判断が難しくなりやすいです。
特に、
- 自分が連帯保証人になっている
- 高価な遺品が残っている
- 相続財産から特殊清掃費を支払いたい
- 遺品をどこまで処分してよいか分からない
- 相続放棄後の財産管理について判断できない
といった場合は、清掃業者だけで判断せず、弁護士など相続に詳しい専門家へ確認してから進めるとよいでしょう。
ポイント
相続放棄をしても、連帯保証人としての責任は別に残る可能性があります。また、相続放棄前の財産処分は単純承認とみなされるリスクがあるため注意が必要です。相続放棄後の財産管理についても、自分が現に占有しているかを確認して対応しましょう。
参考:e-Gov 法令検索
よくある質問
まとめ
相続放棄が受理されると、被相続人の特殊清掃費などを相続人として負担する義務は原則として引き継ぎません。
ただし、連帯保証人になっている場合や、自分で特殊清掃を契約した場合は別です。また、相続放棄前の遺品処分は単純承認とみなされる可能性があるため、財産の扱いにも注意しましょう。
特殊清掃でお悩みの場合は、お気軽にご相談ください。


